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ネットワーク産業の規制と法理

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日本大学法学部准教授
友岡史仁 著
A5判 並製 390頁 ¥4,300+税
ISBN978-4-86251-143-0 C3032

電力・ガス、電気通信、鉄道、上下水道といった「ネットワーク産業」と称される諸分野では、「規制改革」や民営化等を契機にして、積極的な競争促進を狙いとした事業者に対する規制の存在が世界的なスタンダードとなっている。しかし、実際には、諸制度の複雑化とともに規制の在り方そのものが問われているのが現状である。
 こうした問題を扱った研究書は、これまでにも経済学者が中心となって公刊されてきた経緯がある。しかし、本書は、法学に携わる立場から、豊富な先例を有しかつ我が国における制度設計上も参照を不可欠とするイギリス・EU等の諸事例に照らしながら、ネットワーク産業における規制の在り方を制度に忠実に検証し、そこに見られる諸課題の解明を試みようとするものである。
 第1部では、これまでにも学説上混乱が見られる個別産業の根拠法(事業法)と競争法・独禁法の適用関係について、問題整理とあわせた法解釈の観点から論理的に解明し、第2部では、東日本大震災以降、原子力政策と並び、我が国が直面している政策課題である「発送電分離」について多様な法的視点を提示し、第3部では、EUにおける電力・ガス市場の自由化と並び、送配電網・ガスネットワークに対する「エネルギー供給保障」という観点から競争政策との調和的な制度を考察する。これらの内容は、研究・実務両分野において類書に見られない視点からの貴重な寄与となるだろう。

目次
はしがき
凡例

序章 ネットワーク産業の規制法理のとらえ方

Ⅰ ネットワーク産業の法関係
(1)「ネットワーク」のとらえ方
(2)「ネットワーク産業」と“法関係”の視点?“規制”と“競争”
Ⅱ 問題設定─本書の問題意識
(1)共通の問題意識
(2)規制組織・立法論的課題
(3)法解釈上の課題?競争法・独禁法を中心に
(4)産業構造の変革との関係?エネルギー分野から
(5)自由化範囲の現代的課題

第1部 分野横断的な規制法理

第1章 公益事業と競争法の相関関係

はじめに
Ⅰ 問題提起
Ⅱ 本章でのアプローチの方法─イギリス型モデル
第1節 相関関係を見る視点
Ⅰ 分類とその意義
(1)概念内包型分類
(2)規制目的型分類
(3)規制客体型分類
Ⅱ 規制客体型分類と競争法・独禁法との関係(概要)
(1)特殊な事業規制
(2)規制客体型分類から見た事業規制の種類
(3)相関関係の着眼点
第2節 イギリス型モデルの検証
Ⅰ 検証の視点
Ⅱ 事業構造と事業規制
(1)規制客体型分類の諸類型
(2)「垂直統合維持型」
(3)「垂直統合分離型」
(4)「上下分離型」
Ⅲ イギリス競争法の規制構造と「競合的権限」
(1)1998年競争法における規制構造(概要)
(2)「競合的権限」における制度問題
Ⅳ 競争法の適用事例
─価格設定行為と供給拒絶を中心に
(1)問題の前提
(2)超過価格設定
(3)略奪的価格設定
(4)マージン・スクイーズ
(5)差別的価格設定
(6)供給拒絶
Ⅴ 事例検証
(1)問題整理
(2)「競合的権限」を用いた競争法の具体的適用方法
(3)価格設定行為をめぐる「濫用」行為の判断方法
(4)EFの法理の用い方
(5)レヴァレジング(独占の梃子)の用い方
第3節 分野横断的な競争法・独禁法の適用課題
Ⅰ 日本型モデルのイメージ
─イギリス型モデルとの対比
(1)事業規制の在り方
(2)競争促進的事業分野の相違
(3)ガイドラインから見る競争法・独禁法の在り方
(4)問題場面の限定
Ⅱ 独禁法と事業規制・事業法の関係
(1)解釈の方向性
(2)多様な相互補完的関係の理解
(3)日本型モデルにおける相互補完的関係の検討
Ⅲ 複数にわたる違法行為類型の該当性
(1)問題の所在
(2)差別対価と不当廉売の関係
(3)マージン・スクイーズ
Ⅳ 残された課題
(1)EFの法理
(2)レヴァレジング(独占の梃子)の問題
さいごに
Ⅰ 検証の意義と残された諸相
(1)検証の意義
(2)残された諸相
Ⅱ 多面的分析の必要性

第2章 ネットワーク産業における
「競争対抗料金」の事例検討

はじめに
第1節 独禁法違反型訴訟における問題場面
Ⅰ 訴訟類型
(1)排除措置命令等取消請求型
(2)損害賠償・差止請求型
Ⅱ 「競争対抗料金」の概念との関係
(1)概念
(2)具体的な独禁法違反行為類型
?電力・ガス取引、電気通信各ガイドラインから
第2節 「競争対抗料金」に係る代表的訴訟事例
Ⅰ 位置付け
Ⅱ 排除措置命令等取消請求型東FTTH事件
(1)事実の概要と判旨
(2)検討
Ⅲ 損害賠償・差止請求型
─ヤマト運輸対日本郵政公社事件
(1)事実の概要と判旨
(2)検討
さいごに

第3章 アクセス・チャージと事業法上の課題

はじめに
第1節 総論的検討
Ⅰ 費用算定方式の法制度上の根拠
(1)約款規制のパターン
(2)費用算定方式
Ⅱ 検討
(1)法解釈上の相違
(2)事業法上の規制構造と紛争態様の相違
第2節 各論的検討
Ⅰ フォワード・ルッキング・コスト方式
(1)理論的位置付け
(2)現行制度上の評価
Ⅱ 長期増分費用方式
(1)理論的位置付けと評価
(2)接続料認可取消訴訟(東京地判平成17・4・22)の検討
?ユニバーサルサービスとの関係を中心に
さいごに

第2部 エネルギー分野から見た規制法理
─イギリスの事例を参考に

第1章 イギリスの電力・ガス事業分野からの示唆

はじめに─問題意識と検討枠組み
第1節 純粋構造規制との関係
Ⅰ ガス事業分野における「所有分離」との関係
Ⅱ 「所有分離」に対する評価
第2節 「市場支配力」の行使に関わる問題
Ⅰ 合併事例─二大発電事業者とCentrica
Ⅱ 行為規制に関する事例
─配電事業分野における濫用行為(United Utilities事件)
Ⅲ 検討
(1)各事例の評価
(2)「独占の梃子(monopoly leverage)」との関係
(3)事業法との関係
さいごに

第2章 「発送電分離」論の法的諸課題

はじめに
第1節 電力事業の基本構造に係る課題
Ⅰ 現状認識
Ⅱ 議論の特徴
第2節 制度変遷と制度構造の特質
Ⅰ 歴史的経緯と制度変遷
Ⅱ 競争政策上の評価
(1)理論的評価
(2)他の事業分野から見た電力事業の特徴点
第3節 「発送電分離」論の法的課題
Ⅰ 課題一般
(1)議論の多義性と本来的意味
(2)電源多様化論
Ⅱ イギリス型モデルの特徴点
(1)イギリス型モデルにおける「発送電分離」
(2)電源多様化との関係性
(3)事業構造の変容??再垂直統合化
Ⅲ 「発送電分離」の手段に係る法的問題の検討
(1)概要
(2)同意型
(3)独禁法型
(4)収用型
さいごに

補論 日本型「発送電分離」論の概要と課題
─電力システム改革委員会報告書を踏まえて
Ⅰ 問題提起
(1)位置付け
(2)本補論に取り上げる諸課題
Ⅱ 実現化に対する諸課題─法的側面から
(1)問題の所在
(2)供給義務との関係
(3)総括原価方式廃止の意味
Ⅲ 競争政策実現方策に対する諸課題
─送配電部門の在り方
(1)とらえ方
(2)広域性・中立性確保の方策

第3部 ネットワーク産業と通商規制
─エネルギー分野を中心に

第1章 EUにおけるエネルギー市場の統合と
EC条約

はじめに
第1節 域内エネルギー市場の統合化と自由化の接点
Ⅰ 域内市場統合化の流れ
(1)『域内市場統合白書』における市場統合論
(2)単一欧州議定書による影響
Ⅱ 『域内エネルギー市場報告書』における提言
(1)「物品の自由な移動」と自由化との接点
(2)「通過の自由」との関係
(3)自由化の第1段階??価格透明指令と通過指令の成立
(4)マーストリヒト条約との関係
第2節 電力・ガス事業における
輸出入数量制限禁止規定の適用問題
Ⅰ 輸出入数量制限禁止規定の適用
(1)「物品」の該当性
(2)輸出入の排他的権限とEC条約
Ⅱ 例外的許容
(1)例外的許容の範囲
(2)電力・ガス事業との関係
第3節 電力・ガス事業における
「国家独占の調整」問題
Ⅰ 欧州委員会対オランダ他3事件(1997年)
(1)欧州委員会対オランダ事件
(2)欧州委員会対イタリア事件
(3)欧州委員会対フランス事件
(4)欧州委員会対スペイン事件
Ⅱ 検証
─電力・ガス事業規制とEC条約31(旧37)条
(EU機能条約37条)との関係
(1)位置付け
(2)EC条約31(旧37)条(EU機能条約37条)の規制目的
(3)「商業的性格の国家独占の調整」について
(4)国内法における排他的輸出入権限の付与と「差別」
第4節 リスボン条約とエネルギー政策
Ⅰ 前提
Ⅱ 規定の概要と評価
(1)規定の概要
(2)評価
(3)残された課題
第5節 「越境取引」と競争政策の関係
Ⅰ 「越境取引」に係るEU法制
(1)電力・ガス指令の効用
(2)EUレベルの「越境取引」関連法制
(3)課題抽出─優先的アクセスに係る評価と
新規ネットワーク建設への投資インセンティブの確保
Ⅱ 優先的アクセス・長期契約に係る評価
W事件を中心に
(1)事実の概要・法的見解・判旨
(2)評価と課題
Ⅲ 新規ネットワーク建設への
投資インセンティブの確保
(1)特徴
(2)新規建設に係る適用除外基準
(3)評価
さいごに

第2章 エネルギー分野におけるWTO協定と
地域貿易協定の役割

はじめに
第1節 WTO協定における地域経済統合の正当性
Ⅰ 正当化の根拠
Ⅱ 具体的効果
第2節 物品貿易の自由化との関係
Ⅰ エネルギー分野との接点
Ⅱ 地域貿易協定の役割
(1)問題の所在
(2)NAFTAの場合
(3)EUの場合
第3節 サービス貿易の自由化との関係
Ⅰ エネルギー分野とGATSとの接点
(1)GATSの枠組み
(2)エネルギー分野に関する「サービス」の定義
(3)市場へのアクセスと内国民待遇
Ⅱ エネルギー・サービス貿易と地域貿易協定
Ⅲ エネルギー・サービス貿易の展望
さいごに

終 章 

Ⅰ 分野横断的な規制法理の課題
(1)法システムの相互補完性原理
(2)料金規制における競争問題と残された課題
Ⅱ エネルギー分野の規制法理における問題
(1)問題の特質
(2)「発送電分離」論の展望
Ⅲ 通商規制の枠組みと課題
(1)EUにおける課題
(2)WTO・地域貿易協定における課題
Ⅳ 結びに代えて

参照文献一覧
索引

執筆者など

友岡 史仁(ともおか ふみと)

現 在 日本大学法学部准教授
専 攻 行政法、経済法

略歴
1973年 和歌山県生まれ
1997年 慶應義塾大学法学部法律学科卒業
1999年 慶應義塾大学大学院法学研究科修士課程修了
2003年 慶應義塾大学大学院法学研究科後期博士課程単位取得退学
日本大学法学部専任講師
2006年 日本大学法学部助教授

主著
『公益事業と競争法―英国の電力・ガス事業分野を中心に』(単著、晃洋書房、2009年)
『政策提言―公文書管理の法整備に向けて』(総合研究開発機構=高橋滋共編、商事法務、2007年)
『条解行政情報関連三法―公文書管理法・行政機関情報公開法・行政機関個人情報保護法』(高橋滋=斎藤誠=藤井昭夫編、弘文堂、2011年)
『行政サービス提供主体の多様化と行政法―イギリスモデルの構造と展開』(榊原秀訓編、日本評論社、2012年)

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