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階上都市
¥2,700
津波被災地域を救う街づくり 阿部 寧 著 A5判 並製 208頁 ¥2500+税 ISBN978-4-86251-209-3 C3052 説明 本書は、これまでの常識を覆す提案。横(水平)に逃げずに縦(垂直)に逃げることをコンセプトにして、津波に耐えうる階上都市を構想した。 序章の「階上都市の実現に向けて」から最終章のⅦ章「街(都市)再生の条件」まで、各章ごとに詳細に分析し、過去の津波被災の歴史にも学び、新しい街づくりを提案している。 目次 はじめに 序章 階上都市の実現に向けて Ⅰ章 復興構想の前提と理想 Ⅰ‐1 復興のための前提条件 Ⅰ‐2 復興の課題 Ⅰ‐3 木造戸建住宅の禁止と地域再生の方向を定める Ⅰ‐4 復興に先駆けて Ⅰ‐5 再建場所の選定を誤ってはならない Ⅰ‐6 防潮堤に頼ってはならない Ⅰ‐7 高台移転は原則としてやってはならない Ⅰ‐8 ユニークな街づくり Ⅱ章 東日本大震災の被災実態 Ⅱ‐1 日本列島の運命 Ⅱ‐2 津波の記憶と忘却 Ⅱ‐3 過去の津波経験が活かされていない Ⅱ‐4 津波の恐ろしさを思い知る Ⅱ‐5 津波の速度と圧力は脅威だ Ⅱ‐6 日本列島周辺は海抜ゼロメートル地帯 Ⅱ‐7 ガレキが大量発生 Ⅱ‐8 鉄筋コンクリートの建物は残って活かされる Ⅲ章 復興のためのコンセプト Ⅲ‐1 発想の転換が重要 Ⅲ‐2 将来更新可能な建築システムの導入 Ⅲ‐3 人工地盤の効用と地盤沈下対策 Ⅲ‐4 街づくりには共同溝の設置を Ⅲ‐5 津波避難所不要の立体的な街づくり Ⅲ‐6 海辺の景観と復興計画 Ⅲ‐7 日本国土の可住面積に限界あり Ⅲ‐8 復興都市のモデルはコンパクトシティに通じる Ⅲ‐9 生活再建は津波に強い街づくりとともに Ⅳ章 街づくり・建築づくりはヒューマンスケールを基調に Ⅳ‐1 五感を活かした街づくり Ⅳ‐2 ヒューマンスケール重視の根拠 Ⅳ‐3 職住接近型生活システムの展開 Ⅳ‐4 住宅計画(共同住宅形式の場合) Ⅳ‐5 近隣住区形成の条件 Ⅳ‐6 建造物にモデュールを適用 Ⅳ‐7 エコ・スーパーユニット建築 Ⅳ‐8 被災地再生のための参考事例(ラングドック・ルシオンと他の事例) Ⅴ章 復興の実施に向けて Ⅴ‐1 復興支援活動 Ⅴ‐2 被災地特区設定の必要性 Ⅴ‐3 美しい街づくりと観光資源 Ⅴ‐4 将来的に持続可能な街づくり Ⅴ‐5 防潮堤(防波堤)から高層建築へと予算をシフト Ⅴ‐6 復興集合住宅はSI方式を採用 Ⅴ‐7 高置道路と救援体制 Ⅴ‐8 震災地域の電力供給ネットワーク Ⅴ‐9 ガレキ処理の重要性 Ⅴ‐10 街づくりは段階を経て進む Ⅵ章 東日本沿岸地域の都市連携を図る Ⅵ‐1 被災者の移住とダイナポリスの開発 Ⅵ‐2 東日本ダイナポリス構想の実現に向けて Ⅵ‐3 東日本ダイナポリスとは Ⅵ‐4 東日本ダイナポリス構想のイメージ Ⅵ‐5 東日本ダイナポリス構想におけるネットワーク Ⅵ‐6 災害時における自助・共助・公助の連携行為を実現させる Ⅶ章 街(都市)再生の条件 Ⅶ‐1 再建する新しい街づくりの課題と対策 Ⅶ‐2 防潮堤と建築物の相関関係 Ⅶ‐3 将来再発する復興投資と精神的ダメージを回避 Ⅶ‐4 アーバンデザインと景観計画 Ⅶ‐5 建設コストの考え方 Ⅶ‐6 超高層集合住宅の可能性 Ⅶ‐7 復興プロジェクトの事業推進に民間活力導入を Ⅶ‐8 土地・家屋所有権と権利移転 Ⅶ‐9 人口減少と街づくり Ⅶ‐10 復興の建設には工程計画からはじめよう コラム 1 津波の定義 2 用語の定義 3 景観緑三法 4 スケルトン・インフィル 5 スマートシティ 6 コンパクトシティ 7 PFIとPPP 8 区画整理パターン 9 人工土地 おわりに 執筆者など 2011年3月11日午後2時46分、その地方の東方に位置する太平洋の海底で発生したわが国史上空前の巨大地震マグニチュード9,0とともに、未曾有の巨大津波が猛烈な勢いで襲いかかり、人々と街を飲み込み、多くの市町村は壊滅状態に陥った。 この大震災における津波の恐ろしさは、テレビの映像をとおしてリアルタイムで人々の記憶に強烈な印象となって焼き付けられることとなった。丘の上からの映像や空からの報道写真は、津波の動きをつぶさに捉え、人々の恐怖心を煽り増幅させた。その映像の中に逃げ惑う住民の姿が痛ましく映し出されていたが、観ている者にとって助ける術もなかった。走行中の自動車があっという間に津波にさらわれ、流された。 日本列島で暮らす限り、地震と津波は切っても切り離せない宿命的な関係にある。これをしっかり自覚しておくことが重要だ。被災した人々の実体験を想像することは至難の業だが、今後は、この体験を念頭において復興構想(ビジョン)を描き、それを基盤にした被災地再開発に取り組まなければならない。 本書は、提案という形で復興のための構造物としての考え方を模索した基本論(概念)である。復興のあるべき姿を描くことを本構想で提示したい。
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これからの環境エネルギー
¥2,592
未来は地域で完結する小規模分散型社会 千葉商科大学教授 鮎川 ゆりか 著 A5判 並製 280頁 ¥2,400+税 ISBN978-4-86251-181-2 C00336 本書は、「エネルギーとは何か」という基本的なところから書き起こし、エネルギー利用の歴史、今主流として使われている大量の化石燃料がどのように環境へ悪影響をもたらしているかなど、環境との共存が求められる現在の「エネルギー利用」の意味を解き明かしていく。 前半では、福島原発事故から4年後の検証として、当時とその後のエネルギー問題を取り上げる。また、エネルギーと環境、特に地球温暖化問題を見据えながら、化石燃料と原子力をどう考えるかを解き明かす。 後半は、これからのエネルギーとしての、あらゆる側面からの徹底した省エネルギーの世界、再生可能な自然エネルギー、そしてこれらをどう使い回していけば、環境と共存できる社会が成り立ちうるか、と展開していく。 最後に、目指す方向として、地球温暖化対策にも直結する小規模分散型社会の提案を行う。その姿を具体的に模索・実現しつつある岩手県紫波町を例に、地域で完結する小規模分散型自立社会が、実現性のあるものであることを示す。 《目次》 第一章:3・11から見えてきた日本のエネルギー問題 第二章 エネルギーの基礎知識 第三章 化石燃料と電気 第四章 原子力発電 第五章 フクシマ原発事故はなぜ起きたか 第六章 原発を支えてきたのは、我々の払う電気料金 第七章 「節電の夏」賢く―省エネルギー革命 第八章 「省エネ」「創エネ」のカギは熱利用 第九章 再生可能な自然エネルギー 第一〇章 必要なのは電力改革とスマートグリッドによる需給管理 第一一章 進む地域の自然エネルギー 第一二章 岩手県紫波町にみる環境エネルギー社会の未来 第一三章 結論─これからの環境エネルギー社会 附録:大学で「自然エネルギー一〇〇%」を! 執筆者など 千葉商科大学 政策情報学部 教授 1971年上智大学外国語学部英語学科卒。1996年ハーバード大学院環境公共政策学修士修了。1988~1995年まで原子力資料情報室の国際担当。日本のプルトニウム政策転換のための活動に従事。1997~2008年までWWF(世界自然保護基金)気候変動プログラム・グループ長/特別顧問。国連気候変動枠組み条約国際交渉で京都議定書のルール作り、発効、2013年以降の枠組み交渉を追ってきた。また企業の先進的取り組みを導くプログラム、日本に自然エネルギーを導入するための活動を展開。2008年G8サミットNGOフォーラム副代表。衆参両議院の環境委員会等で参考人意見陳述。環境省の中央環境審議会「施策総合企画小委員会」、「持続可能なアジアの環境人材育成検討会」委員、「グリーン電力認証機構」委員を歴任。現在千葉県市川市環境審議会会長。2011年上智大学マスコミ・ソフィア会より「第21回コムソフィア賞」受賞。翻訳「プルトニウム燃料産業」(1995年 七つ森書館)。諸富徹との編著『脱炭素社会に向けた排出量取引』(2007年 日本評論社)、『e-コンパクトシティが地球を救う』(2012年 日本評論社)など他多数。2010年4月より現職。
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バイオサイエンスの光と影
¥2,700
生命を囲い込む組織行動 森岡 一 著 四六判 並製 256頁 ISBN978-4-86251-101-0 C3060 バイオテクノロジーの発達によって生命現象が発明とみなされるようになり特許として権利化されたが、これは生命の「囲い込み」に他ならない。本書では、生命の囲い込みによる弊害、すなわち研究活動の阻害や途上国の医薬品価格への影響、遺伝子組み換え植物を販売する企業が農民に与える苦悩など、さまざまな問題を多くの事例で紹介する。それを通して、科学の発展のありかたと産学連携、オープンイノベーションを論じる。 目次 はじめに 第一部 生命現象の特許化がもたらす問題とは 第1節 初の微生物特許チャクラバティ事件 ・生物体が特許として最初に認められたチャクラバティ事件 ・チャクラバティ特許の審査と裁判 ・進歩する科学技術による知的財産法の拡大解釈への圧力 ・時代の進歩に法律を適応させるのは政治である ・チャクラバティ事件は生物特許審査基準を変えた ・チャクラバティ事件の社会的影響 第2節 患者細胞特許ムーア事件 ・患者の一部を特許化しても、患者に特許の所有権はないとしたムーア事件の教訓 第3節 カナバン病遺伝子特許事件 ・患者が自身の試料を譲渡した場合の所有権の帰属 第4節 遺伝子組み換えマウス特許事件 ・がんマウス特許をげっ歯類に限定して認めたEPO裁定 ・カナダ最高裁はがんマウスについて組成物特許を形成しないと判断 第5節 乳癌遺伝子特許ミリアド・ジェネティックス事件 ・乳癌・卵巣癌遺伝子BRCA1とBRCA2特許を巡る紛争 ・公共の福祉に貢献すべき遺伝子診断特許の特許権行使のありかた ・ミリアド・ジェネティックス遺伝子特許裁判判決のもたらしたものと今後の展開 第6節 合成生物学特許の展望 ・合成生物学の知的財産による囲い込み 第二部 ライフサイエンス分野の特許権行使のありかた 第1節 リサーチツール特許とパテント・トロール活動 ・パテント・トロール活動は特許の流通・活用を妨げる 第2節 アッセイ方法特許ハウジー事件 ・日本企業に強引にライセンス活動をしたハウジー製薬 第3節 核内因子NF─κB特許アリアド事件 ・アリアドによるNF─κB特許のライセンスと訴訟 ・生命の基本反応に関わるNF─κB特許の活用のありかた 第4節 がんマウス特許浜松医大事件 ・リサーチツール動物特許による公共研究機関での実験の禁止請求 第5節 ケモカイン受容体CCR5特許事件 ・ケモカイン受容体CCR5をリサーチツールとして用いた小野薬品に対する訴訟 第6節 リサーチツール特許問題の残したもの ・スクリーニング特許は「使用方法」の発明である 第7節 炭疽菌治療薬シプロ供給と公共の利益 ・米国バイ・ドール法マーチ・イン条項における「公共の利益」の判断 第8節 公共の利益とバイ・ドール法マーチ・イン条項 ・バイ・ドール法マーチ・イン条項とは 第9節 マーチ・イン条項とセルプロ血液幹細胞採取方法事件 ・セルプロの血液幹細胞採取方法を巡るマーチ・イン条項の発動検討 第10節 マーチ・イン条項と抗エイズ薬ノルビア事件 ・アボットの抗エイズ薬ノルビア(Norvir)の価格引上げに対するマーチ・イン条項発動検討 第11節 マーチ・イン条項と緑内障治療薬ザラタン事件 ・ファイザーの緑内障治療薬ザラタン(Xalatan)のケース 第12節 公共の利益と強制実施権行使の条件 ・NIHがバイ・ドール法マーチ・イン条項を発動する条件 ・日本版バイ・ドール法第三〇条および特許法第九三条の運用 第13節 医薬品アクセスと強制実施権 ・医薬品アクセスのための政府の強制実施権行使は公衆衛生確保のために必要 第14節 タイの医薬品強制実施権と抗エイズ薬供給 ・タイの医薬品特許強制実施権行使と公共の利益としての公衆衛生 ・医薬品に対する強制実施権行使のための条件 ・公共の利益のための強制実施権発動の条件 第15節 抗エイズ薬の開発途上国への低額供給(新しい試み) ・ビル&メリンダ・ゲイツ財団 ・クリントン財団 ・UNITAID 第16節 農民の権利とバスマティ米特許事件 ・伝統的農業の改良技術が特許化で独占されるバスマティ米特許 第17節 遺伝子組み換え植物を巡るモンサント・ラウンドアップ事件 ・モンサントのラウンドアップ耐性遺伝子組み換え穀物特許の権利行使は農民の権利を奪う ・米国モンタナ州で議論されている農民の権利保護法案 第三部 科学の発展とオープンイノベーションへの道 第1節 パテントプール ・協働的知的財産管理としてパテントプールをライフサイエンス分野に導入可能か 第2節 産学連携のありかた ・産学連携における知識移転の基本問題 ・ライフサイエンス分野の3つの最も著名な基本特許の活用事例 ・大学などの研究機関の権利行使による行き過ぎた利潤の追求 ・特許活用に関する研究開発現場の考え方 ・大学など公共機関研究に対する「試験又は研究」の例外規定の考え方 第3節 オープンイノベーションへの道 ・「死の谷」を乗り越えるための特許活用と産学連携 ・ライフサイエンス分野の新しい産学連携を実行するための特許権活用のありかた 第4節 クリエイティブ・コモンズのありかた ・クリエイティブ・コモンズとは ・ライフサイエンス分野のイノベーションの方向性を示すコモンズ思想 ・スティグリッツの見解 ・サルストンの見解 第5節 科学の進歩促進のためのフリーアクセス運動 ・人道的観点からのライフサイエンス成果のフリーアクセス運動 ・SIPPI(公共のための科学と知的財産) ・オープンメディスンイニシャティブ ・EPPA(エイズのための必須特許プール) 第6節 農民の権利と農業分野のフリーアクセス運動 ・CAMBIA ・PIPRA(農業のための公共知的財産) ・EPIPAGRI(農業用バイオテクノロジーに対する知的財産権のヨーロッパ集合的管理を目指して) ・AATF(アフリカ農業技術財団) おわりに 発表論文